1949年(昭和24年)広島で創業。以来、米食には欠かせないふりかけ、混ぜご飯のもと、お茶漬け、青のりなどで日本の食卓を彩りつづけてきた三島食品株式会社。その代表作の1つが、日本生まれ、日本育ちなら誰もが目にしたことがあるであろう、赤しそのふりかけ「ゆかり®」。子どもから大人まで、ご飯のお供の代表格だ。今回は営業本部長と生産本部長を兼任する常務取締役 末貞操氏と、通称「越後屋」としてIT日報を通じて若手社員の成長をバックアップする生産管理リーダー 徳丸賢悟氏にお話を伺った。
弊社では、以前から紙の営業日報を上司・部下間のコミュニケーションツール、情報伝達システムとして使っており、社長も全員分に目を通していました。
たとえば、主力商品の一つである「ゆかり」の誕生にも、実は当時の日報が大きく関わっています。1960年代の後半なのですが、地場では赤しその漬け物がよく売れているという情報を名古屋の営業担当者がキャッチしまして、自社でも作れないかと当時の社長に直談判したそうです。ところが弊社は漬け物屋ではありませんから、社長はこの提案を一蹴しました。それでもこの担当者は諦めずに、毎日のように日報に赤しその漬け物を作ってほしいと書き続けたのです。最後には社長のほうが根負けして、「漬物はダメだめだが、三島食品が長年積み上げてきた乾燥技術を使って、赤しその漬物をふりかけに近づけて売るのならいい」と商品開発にゴーサインが出たのです。
このように、マーケットの動きを「見える化」する手段としても一定の活用はできていたのですが、何せ紙ではせっかく蓄積された情報を後で見返したり、素早く部門間・拠点間で共有したりすることができません。再利用性が乏しいということです。そこで、営業やマーケティングの現場から、せっかくの日報をIT化して活用レベルを向上させたいという要望が上がってきまして、NIコンサルティングのSales Force Assistant 顧客深耕を導入しました。
この時、特に意識したのが、現場で拾い上げたニーズを吸い上げて商品開発やマーケティングに活かしていくという点です。
販売管理システムでは、商品別や業態別の売上実績データは参照できても、なぜ売れて、なぜ売れていないのか、さらには売り場ではどういうニーズがあるのか、競合はどのような動きをしてきているのかといった定量情報は把握できません。こうした現場の声をタイムリーに全社にフィードバックしていく仕組みにしていこうと考えました。
マーケットに接している営業部門が商品開発の先頭に立つ。逆に商品コンセプトやセールスポイントを熟知した研究・生産部門が販売の先頭に立つ。そうした体制づくりの武器としたかったです。
はい。そうした目的も然ることながら、マネジメントサイクルを月次管理から日次管理に高速化できました。
これは生産部門、製造現場では当たり前のことですが、営業部門は月末一括、前月の数字を見て今月の対策を打っていました。これでは目標や計画とのギャップをつかむのも遅いですし、対応も後手になってしまいます。その点、IT日報があれば、日々の活動やその成果、顧客の反応がダイレクトに、デイリーにモニタリングできますから、フィードバックもダイレクトに、デイリーに行なって、PDCAサイクルを早めることが可能になりました。
また、拠点間の事例共有や社員間のノウハウ共有によって、営業部門全体の平均値の底上げにも大きな効果を発揮しています。
我々は全員分の日報を毎日見ていまして、その中で創意工夫があり、有効な活動ができていると思ったものをピックアップして、NI Collabo Smartのナレッジ・コラボレーション(掲示板)に投稿させています。全社的な情報交流の場であり、ナレッジ共有の場ですね。
良い日報には、商談の流れが表れます。売れたという結果だけでなく、なぜ売れたのか。何をゴールにして、どういう資料を、どう説明したのか。その結果、お客様からどのような反応が得られたのか。方法や手立てを疑似体験することができます。日報は管理したりチェックしたりするための道具ではなく、皆が己の輝きを見せるための舞台ですから。
こうして良い仕事を「見える化」して伝播し、さらに営業ツールや社内勉強会や毎朝のロープレに落とし込んで標準化し展開していくことで、特に中間から若手層の営業力・提案力が上がってきています。おかげさまで新入社員の戦力化も圧倒的に早くなりました。
IT日報や朝会を通じた日次管理で、極端に言えば、月に1度から20営業日で月に20回、つまり「20倍の速度で成長している」と言っても過言ではありません。
また、全国の支店や営業所についても、拠点同士というのは互いに競争し合うライバル関係であるとも言えますが、他拠点の良い事例があると、頭を下げて報告者に勉強会の講師を頼むようなケースも生まれており、切磋琢磨して三島食品全体のレベルアップにつながっています。
私どもの「越後屋」の意味は、直接手は下さないが人をうまく使ってプラスを生む役目と、いうことです。
弊社内にはこうした組織図に載らないプロジェクトチームや御役目制度というものが多数あります。その中で越後屋は、直属の上長や役員という縦の関係ではなく、組織に横串を入れて、拠点間の課題の解消や、営業担当者のフォローアップを行なうという御役目です。
元々は営業所長を務めており、今は生産管理を担当しているのですが、それらの経験を元に、上からではなく横から、つまり営業担当者の目線に下りて、他部門の立場や状況も踏まえて、たまにはおどけたりもしながら、彼らの活躍に光を当てたり、応援したり、心のケアをしたりしています。これができるのも、IT日報によって全員の仕事がオープンになっており、それに対するコメントもまたオープンで即座に伝わるからですね。
残念ながら、まだ拠点によってバラつきがあります。徹底できる拠点もあれば、そうでない拠点もあるのですが、これはひとえに拠点長の采配に依ります。
もちろん、100%入力するように強制することはできると思います。ですが、今はあまりとやかく言っていません。
打たないとマズい。書くことがないと恥ずかしい。会議と同じです。たとえば事例報告で発表することがないと肩身が狭い、居た堪れないわけです。そうして打たざるを得ない状況ができてくると考えています。
ちなみに、業績の良い拠点は、明確な拠点方針を持ち、それに沿った行動が日報に表れています。戦略の日次管理ができているということです。ですから、やってダメならすぐ直すというサイクルがスピーディーに回っています。
時代が変われば価値観が変わりますから、何をもって「良い」というのかは常に変化すると考えていますが、今は「品質的に良い商品があるのだから、知っていただきたい。知っていただかなければ価値をお届けできない。」というように解釈しています。
良い商品とは、美味しくて安全ということ。これまでも弊社では、最適な素材の調達、素材の良さを活かす加工、商品の出荷まで、徹底して品質にこだわってきました。
そして、それだけ良い商品であるなら、より多くの方に認知していただき、召し上がっていただこうというのが、今の取り組みです。これまでは展示会に出展しても目立つ装飾などはせず、広告も出してきませんでした。こうした販促活動やインターネットも活用したマーケティングを積極的に行なう「草食営業から肉食営業へ」のシフトです。
楽しく美味しく安心できる食事をより多くのご家庭にお届けするという使命を具現化する。そのための営業力強化であり、営業が先頭に立った商品開発体制なのです。
ロングセラーの定番商品に頼らず、いや、定番商品があるからこそ、その商品力に安住せず自信を持って営業やマーケティングを強化していく。さらに顧客接点たる営業現場で得られたニーズを商品開発に活かすことで業績アップを実現する三島食品。我々も日本企業だからこそ、同社の支援を通じて日本の食文化の継承と発展に寄与していきたい。