地域密着の情報掲載にこだわり、高い閲覧率を誇るフリーペーパー『ちいき新聞』。30年前に千葉県八千代市で創業、2万2,000部からスタートした発行部数は今や毎週204万部(2014年10月現在)となり、千葉県と埼玉県に展開する全国有数のフリーペーパーへと成長している。この『ちいき新聞』の発行元が株式会社地域新聞社。今回は同社の創業者であり代表取締役社長 近間 之文氏と取締役営業本部長 山田 旬氏にお話を伺った。
私は体育大学の運動部でマネージャーをしていました。300名ほどの部員がいたのですが、この部の運営を通じて、マネジメントとは何かということを経験しました。大学卒業後は起業直後の社員2〜3名の会社に入社し、文字どおり何でもやることができました。入社後数年で会社は拡大して社員数も100名近くまでになったのですが、元々独立志向が強く、孔子の「三十而立(三十にして立つ)」に学び、30歳で独立を決意しました。独立に際して考えていたのが小さくてもNo.1になるための地域密着型ビジネスだったのですが、ある時、たまたま読んだ雑誌で「フリーペーパー」という事業を知りました。フリーペーパーは地域の広告主に広告を出稿してもらい広告料収入を得て、地域の読者に無料で配布する事業モデルです。当時すでに全国展開の大手の事業者が数社いたのですが、紙面を見てみると全国共通の情報ばかりで、生活に役立つ身近な地域情報はそれほど充実していませんでした。これならば自分にも勝ち目があると考え、創業しました。
弊社では千葉県と埼玉県を55のエリアに分け、1エリアあたり3万部程度で合計204万部発行しています。フリーペーパーの流通方法は、新聞への折り込み型、駅のような人の集まる場所へのスタンド設置型等がありますが、弊社は一軒一軒の個人宅へ配布する戸別配布型です。そして、このエリア細分化と手配りの2つが弊社の最大の強みです。
まずはエリア細分化ですが、3万世帯を1エリアとすると広告の対象エリアが細分化されます。弊社のお客様は家族経営店のような小規模な先も沢山あるのですが、こうした商圏が狭い小規模の事業者様も地域の読者に向けた広告を出すことができます。
次に手配りです。広告効果を高めるためには対象エリアを確実にカバーすることが重要ですが、弊社ではポスメイトという配布スタッフが対象エリアの各家庭に手配りをします。これは大変手間がかかりますが、読者が手に取って見ていただける可能性が一番高い手法なのです。これを裏付ける数値がそのエリアでどれだけ広告を配布できているかという地域カバー率です。あるエリアでは、この地域カバー率が大手新聞3社合計で70%に対して、弊社では97%です。カバー率が高いことで、ちいき新聞への折込広告のご依頼もいただきます。折込広告は始めた当初は毎週2万枚程度でしたが、現在は1,000万枚です。ちいき新聞の広告効果が高いことの表れだと考えています。
弊社の経営理念は「人の役に立つ」です。働く人、地域社会、国家に役に立つということですが、単に売れれば良いのではなく、この理念をビジネスを通じて実現することが我々の価値ですから、経営理念の理解・浸透にこだわっています。理念に共感共鳴してくれる人だけを採用し、理念を体現するための教育にも継続的に取り組んでいます。
経営理念実現のために、とりわけ、直接の顧客接点となる営業を非常に重要な機能だと位置付けています。ですから、弊社では入社後1年間は全員を営業に配属します。弊社のミッションは、広告の企画・販売・制作を通じて、広告主の売上を上げることであり、営業はその最前線です。飛び込み営業から始めて、地道に信頼を積み重ねてやっと契約というスタートラインに至り、そこから仮説検証と提案を繰り返して成果に近づけていきます。この体験が、社員の顧客志向や理念浸透につながるものと考えています。
実は元々のきっかけは顧客の引き継ぎなのです。弊社は地域密着型の事業モデルのため、営業拠点を増やしていく必要があります。拠点を増やす度に人事異動を行なうのですが、ちいき新聞は毎週発行で異動先でも締め切りに追われます。異動をしてしまうと十分な引き継ぎ期間を取ることもできません。拠点を拡大するにつれて、「前の担当者の○○さんだからお願いしたのに」と言われたり「前に話したこと、聞いていないの?引き継ぎはどうなっているの?」とお叱りを受けることが増えてしまいました。こうなると後任の営業担当者はそうしたお客様へ足が遠のきます。取引単価が下がったり、取引が無くなったりする悪循環が起きました。もちろん、お客様にもご迷惑をおかけしてしまいます。こうした事態を打開するために、顧客対応を支える仕組みの構築が必要だという結論に至り、営業支援システム、グループウェアの導入を検討しました。
5社程度で比較をしたのですが、全体の機能や使い勝手が充実しており、その割に低価格なことに加えて、モバイル端末にも標準で対応していることも決め手になりました。弊社の営業担当者は1日20件の客先訪問をします。必然的に外出時間が長くなり、移動時間を含めた外出時間の有効活用が課題となっていました。そこで、外出時にスマートデバイスを有効活用しようと考えていました。今では、スマートデバイス対応のソフトはかなり増えていますが、弊社が検討していた2009年〜2010年当時は対応していない製品も多かったのです。その中で、NIコンサルティングの可視化経営システムは携帯電話からスマートデバイスにまで早くから標準対応をしていました。また、弊社からの質問に対しても一番回答が早く、スピード感があり、ベンチャー企業のような成長性にも期待したこともありました。
おかげさまで組織が拡大する中で、営業同行や社内会議の調整にも時間がかかるようになっていました。しかし、NI Collabo Smartを導入したことでスケジュールが見える化され、スケジュール調整が格段に早くなりました。これはスマートデバイスを利用し、社外でも利用できるようにしたことで効果を高めています。
Sales Force Assistant 顧客深耕も顧客情報や商談情報の蓄積効果が出ています。引き継ぎの際や、若手社員との同行の際など、事前に商談履歴を読んでおくことで、初めて訪問するお客様でもご事情やこれまでの経緯を把握した上で、面談できます。飛び込み営業で他の担当者とバッティングすることもありません。
また、弊社の営業は季節性が高く、毎年この時期に広告を出そうと決めておられるお客様も多いのですが、こうした時にも、「昨年はこのような広告を出していただきましたが、今年はこういう企画にして、こういう効果を狙ってみませんか?」と先回りの提案をすることができるようになっています。しかも、これが営業担当者が替わってもできるようになっているのです。
当初問題と考えていた引き継ぎも含めて、お客様との関係性を営業担当者との属人的なものから、会社対会社のより強固で、安定的で、長期的なものにレベルアップできました。
ちなみにSales Force Assistant 顧客深耕の定着に向けては、登録状況を人事考課の要素に加えると言った工夫もすることで運用の徹底を図っています。
弊社は100年企業の実現を目指していますが、今期は創業から30年が経ち、売上も30億円が目前まで迫ってきています。次のステップとして、売上高40億円を達成したいと考えています。また、ちいき新聞の発行エリアを拡大し、2020年の東京オリンピック開催までに週刊1,000万部発行を目指します。
これらの目標を実現する上で、ますます重要なことは人材です。エリア拡大を任せられる人材を育んでいくことです。この業界は競合企業も多数いますが、その中でも弊社の人材はお客様のお役に立てると考えています。こうした人材、組織を支援し、お客様の業績アップ実現をサポートする仕組みとして、NIコンサルティングの可視化経営システムを活用していきます。
新卒採用の内定者には近間社長自ら各学生の実家まで足を運んでご家族に会社説明を行なうなど、社員の成長に全力で取り組む同社。一方で、社内の業務は積極的にIT化を推進。機械やITでできることは機械やITに任せ、生身の人間には生身の人間だからこそできることに注力させるという、ITを活用した人を活かす経営。お話を伺って、我々NIコンサルティングも、個を活かし全体を生かす経営支援に邁進していこうと、決意を新たにした。
業種 | 導入年月 | 導入製品 | |
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広告関連事業 | 2010年6月 |
✔ 顧客の声 |
株式会社地域新聞社(東証JASDAQグロース) | |||
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本 社 | 〒276-0036 千葉県八千代市高津678-2 Tel 047-480-3377 |
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設 立 | 1984年(昭和59年8月) | ||
代 表 者 | 代表取締役社長 近間 之文豊 | ||
事 業 内 容 | ・「ちいき新聞」発行事業 ・「ちいき新聞」へのチラシ折込事業 ・販売促進総合支援事業 |
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資 本 金 | 2億311万2千5百円(2014年10月末現在) | ||
従 業 員 数 | 196名(2014年10月末現在) |