松井証券株式会社(以下、松井証券)は、「顧客中心主義」の経営理念に基づき、イノベーティブ(革新的)なサービスを他社に先駆けて提供していくことを経営の基本方針としており、日本で初めて本格的「インターネット株式取引」を開始した、大正7年創業の老舗証券会社である。
証券業界で横並びであった株式の保護預かり料の無料化を、手数料の完全自由化(平成11年10月1日)に先駆けて実施したほか、投資者保護基金などの公的な補償に上乗せした独自の補償制度である「アカウント・プロテクション(預かり資産包括補償制度)」、一日定額制の手数料体系「ボックスレート」、返済期限が実質無期限となる「無期限信用取引」などの斬新なサービスを次々に導入、業界の慣習に囚われないサービスを継続的に提供していく事で「顧客中心主義」の経営を実践して、他社との差別化を図っていることが特徴である。
今回は、新規公開株引受業務の「引受」開拓を行う事業法人部門の取締役事業法人部長 一村明博様、事業法人部副部長 竹内良司様の2名に話を伺った。
“上場したい”という希望を持つ会社は、設立直後のアーリーステージの企業を含めると、2万社~3万社あると言われている。その中から、事業法人部で認識している“上場検討中の企業数”は約1万5千社あり、この数が事業法人部の見込み先となっている。
「引受」業務の法人営業というのは、先方企業に上場をしたいという明確なウォンツがあり、そのため通常の営業とは趣が異なっている。しかも、相手先企業の立場から言うと、“証券会社に上場の相談をしたいのだが、なかなか証券会社にアプローチしにくい”という心理的な障壁を持っているので、そのような企業にいかに効果的なアプローチをするかが主な業務になる。加えて、こうしたターゲット企業をいかに少ない人数でフォローしていくかが重要な課題となっている。
一村取締役事業法人部長 様 「当時は商談の内容と企業プロファイルをWordファイルで作成しており、そのデータをフォルダに入れて管理していました。ただ、上場までの期間が数年と長く、担当者が異動になるたびに、新任者は膨大なファイルに目を通す必要がありました。」(一村取締役事業法人部長)
また、多くのファイルの中から必要なファイルを検索しなければならず、命名規則に沿っていないデータは、検索をかけても見つからないという弊害も大きくなっていた。
このような状況のなかで、しばらくアプローチをしていない間に他社に参入を許すなどの、営業として手痛い機会損失も目立つようになる。
「そのため部門を管理するようになってからは、最初にOutlookのアラーム機能を使い、次に訪問すべき時期がわかるようにフォローしている企業のデータを自分で管理することを取り組み始めました。しかし、全てのデータを入れる必要もあり、作業が大変でした。そこで、『独自でのシステム開発も念頭に置いてツールを調査するように』と指示をしたのです。」(一村取締役事業法人部長)
先にも述べたように、「引受」の法人営業は、相手を説得する営業ではなく、先方企業の社長が考える“上場までのロードマップを整備して導く”という指導業務になる。もちろん、上場にいたるまでは様々な困難があり、時期や規模にあった市場戦略や資本政策など、適切なアドバイスや見極めが必要になる。だが、ファーストアプローチは、比較的簡単にアポが取れ、しかも先方企業の方から様々な情報を頂けることが多かった。
つまり、最初の段階ではスキルの低い担当でも十分な営業機会を設けることができるので、接触段階に応じてベテランの営業担当が対応すればよかったわけだ。そのため、当時の営業スタイルは、新人営業が人海戦術で企業を定期訪問する、いわゆるどぶ板営業を行って見込先を発掘するというものだった。
この状況を変え、新人もベテランの営業マンも、相互に活動しやすい仕組みを作るため、まずはツールを入れて環境を変えようとしたのが、最初の取り組みだった。つまり、各営業マンの企業や経営者に対するアプローチ方法について変更を求めるのではなく、顧客との商談履歴管理・訪問予定管理の方法を変えていく手法を重要視したのである。
「この視点で各種ツールを選定した結果、他のSFAは管理・分析機能が中心で、現場の営業担当者が、日々有効に活用できるイメージがつかなかった。自分たちの営業活動に本当に役に立つかどうか、という観点で検討した結果、NIコンサルティングの日報型SFAを選定したのです。」(竹内副部長)
もともと商談履歴を、Wordファイルの文章で作成する習慣があったため、導入後の、日報の入力はスムーズに進んだ。最初はどことなくぎこちない報告調の商談履歴だったものが、じょじょに自分が後から見てわかりやすく、組織として活用しやすいように、情報登録の仕方や文章も変わっていった。
特に、若い営業担当者の意識が変わり始めたという。自分の担当する企業でなくても各種の情報をキャッチし、提案スキルを高めようと、先輩の商談履歴を参照したり、アドバイスをもらおうと部署を超えて日報で相談する行動が出始めたのだ。
松井証券には、変化を恐れない、という組織風土がある。今までと同じ発想では、やがて組織は停滞して、スパイラルダウンに陥ってしまう。しかし、社員ひとりひとりが変えようとする力を持てば、企業と未来をより良くしていく原動力となってくれる。
SFAの導入により、営業活動内容が可視化されることで、松井証券事業法人部はじょじょに変わりはじめた。今後は、もう一段高いステージに向かい、営業力強化と部署間を超えた情報共有化を進めている。また、次のステップを想定して、日報型SFAを上手く活用して、女性のパワーを引き出して、法人営業をさらに進化させていくことを検討しているそうだ。
初期段階での企業アプローチと、ベテラン営業マンの対応を上手に組み合わせ、チームとして効率よい企業アプローチをするに至った松井証券。今後、ヌケモレのないフォローをさらに徹底することにより、良好なコミュニケーションと適切な指導を確立、夢を持つ日本全国の経営者を支えつつ、さらなる成果に結びつけていけていくことを期待したい。
業種 | 導入年月 | 導入製品 | |
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金融商品取引業 | 2005年9月 |
✔ 顧客の声 |
松井証券株式会社 | |||
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本 社 | 〒102-0083 東京都千代田区麹町1丁目4番地 Tel 03-5216-0705 Fax 03-5216-8654 |
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設 立 | 1918年(大正7年)5月 | ||
代 表 者 | 代表取締役社長 松井 道夫 | ||
事 業 内 容 | 金融商品取引法に基づく金融商品取引業 「登録番号 関東財務局長(金商)第164号」 |
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資 本 金 | 119億円 | ||
従 業 員 数 | 109名(平成19年3月31日現在) | ||
認 可 ・ 許 可 | 東京証券取引所総合取引参加者、大阪証券取引所取引参加者 名古屋証券取引所総合取引参加者、福岡証券取引所特定正会員 札幌証券取引所特定正会員、ジャスダック証券取引所取引参加者 |
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系 列 | 独立系(他企業との系列関係は一切ありません) | ||
上 場 取 引 所 | 東証一部(8628) |