1959年に香川県で創業したゴルフ用品ブランド「kasco」を展開するキャスコ株式会社様に可視化経営システム(VMS)導入の経緯と活用状況を伺った。
――2008年に弊社の可視化経営システムのご利用を始めて頂いてから丸10年となります。弊社製品のご採用の経緯を教えて頂けますか。
福岡:弊社は、元々いわゆる創業者によるオーナー会社でした。しかし2006年に株主が変わり、経営が大きく変わりました。営業部門も例外ではなく70名以上いた営業担当者も50名程度に減りました。弊社は営業担当者の人数に対して顧客数が多いという特徴があるのですが、営業担当者が減ったことでそれまでの営業のやり方も見直しをせざるを得なくなりました。
――当初の営業の課題は何だったのでしょうか。
福岡:当初は営業拠点毎に営業の動きがバラバラでした。弊社の営業拠点は全国にありますが、同じ商材を売っているはずなのに営業施策、売れる顧客、売れる商材それぞれで大きな差がありました。しかも拠点間での情報共有もできておらず、会社としての営業の動きができていませんでした。また、営業拠点では既存顧客へのルート営業を行いますが、他にも、量販店本部への営業に特化した部門、他社製品のOEM受託に特化した営業部門もあり、これらの間での情報共有もできていませんでした。当時は紙の日報で報告を行っていましたが紙では一回書いたら終わりで、顧客との継続的なやり取りも分からず改善が必要と感じていました。
こうした課題を解決するためにSFAの導入を検討しました。
――弊社を選んで頂いた理由は何だったのでしょうか。
福岡:3社で比較検討を行いました。NIさんは、当時の導入企業数が1,000社位だったと思いますが、一番柔軟に対応してくれそうだったので決めました。
――SFAを導入してからの状況を教えて頂けますか。
福岡:営業拠点では既存客へのルート営業を行っています。弊社では顧客のランク付けを行い、訪問件数も重視していました。しかし、それまでは、こうした活動の状況の実態が分からなかったのですが、SFAを導入したことで、よく分かるようになりました。また、それまでは営業拠点の拠点長で止まっていた情報が拠点を越えて見えるようになりました。
――現在の日本は人口減少、マーケット縮小社会となっています。
ゴルフ業界も例外ではないと思いますが、どのような営業方針 で取り組んでおられますか。
福岡:弊社では日本国内の新規顧客はあまりありません。従って新規開拓を行うというよりは、既存の取引先に対して、弊社のグローブ、ボール、クラブ、バッグ等の取引品目・取引量を増やしていくという動きが必要です。SFAはこうした動きを可視化し、改善する上で非常に役に立っています。具体的には、日々の活動量、提案状況、提案に対する反応と、販売管理から確認する売上実績と対比を行うという運用をしています。
――定性情報(文字情報)と定量情報(数字情報)の対比ですね。OEM営業ではいかがですか?
水澤:OEMの営業ではOEM案件の受注までの進捗管理を行うため、昨年から案件管理機能を利用し始めました。これまで各人に個別に確認をしていた案件の発生経緯、進捗、結果が可視化されました。これに加えて、案件先行管理を利用することで、先々の案件まで可視化され、営業の動き方が変わってきました。
――最近は働き方改革の観点から、営業部門では直行直帰を勧めるクライアント企業様も増えています。御社ではいかがですか。
福岡:営業拠点から遠方の顧客も多いので、出張を推奨しています。営業部門の社員にはタブレットを持たせているので、SFAへの登録や参照がどこでも可能です。このいつでも見ることができるようになることで、拠点間、部門間での情報共有のスピードと質が格段に上がりました。拠点間の情報共有は主に重要商談通知機能を利用しています。企画提案の成功事例や店舗の売り場写真等があるものは、重要度の高い情報ですので、これらは重要商談として、拠点、部門を越えて共有ができるようになっています。売り場づくりの得意な量販店部門が作った売り場の写真情報を各拠点のルート営業が共有することで、良い事例が共有されるようになりました。
鈴木:成功事例が毎日SFAのトップ画面で表示されて見ることができるので、自分がやっていない新しい提案や取り組みを試すことができるようになりました。事例共有のスピードも格段に上がり、大きな変化があったと思います。
――昨年は弊社の可視化研修も受講頂きましたが、お役に立てましたか。
福岡:グローブの営業を行う上で取り組みました 。経営可視化ツールのMapScorerも導入しているので、今後活用していきたいと思っています。
――営業部門以外への展開はしていますか。
福岡:弊社は自社工場を持つメーカーですので、SFAの情報を商品部及び企画開発部門にもフィードバックしています。営業現場で発生している「こういうことをして欲しい」という顧客の生の声を、製造部門でも見ることができるようにしています。商品部及び企画開発部門で営業日報を全部見ることはありませんが、ピックアップされて見ることができるので見ています。先日も顧客からの要望を基に製品のパッケージングを変えて販売をした所、その製品の販売数量が伸びたということがありました。
鈴木:顧客からの要望事項は若手の営業担当が熱心に上げています。顧客からの要望事項は大小様々な情報があるため、若手ほど自分で溜め込んでしまう傾向がありますが、日報形式だと書きやすいようです。
――部門を越えて営業情報を活かす取り組みを実践しておられますね。来年は創業60周年と伺っています。
最後に、今後の事業展開について教えて下さい。
福岡:弊社はゴルフ用品の中でも、競合他社に比べてニッチな部分に拘ってきました。例えばゴルフボールでは、1986年にソリッド3ピースボールを開発しましたが、これは当社が世界で初めて開発し、製造したものです。
――世界初ですか?すごいですね。
福岡:最近ではバンカーに入った時に使うサンドウェッジで「ドルフィンウェッジ」という製品が累計17万本のヒット商品となっています。このサンドウェッジを使うと苦手とする人が多いバンカーからのショットが打ちやすくなります。これは弊社がミッション(使命)として掲げる “楽しいゴルフ”をできるようにすることを体現した製品です。 “楽しいゴルフ”が目指すのはトッププロの広告 で認知度を上げていくというのではなく、アマチュアの方々にゴルフの楽しさを知って頂くことです。
現在は人口減少社会ですが、未経験者や、以前はプレイしていたがゴルフをやらなくなってしまったシニア層の方々に “楽しいゴルフ”を経験して頂ければまだまだ市場は拡大していくと考えています。
一方で、世界初、業界初といった製品は独自性のある反面、 競合他社での取り扱いがないので、市場を自ら作っていく発想が必要です。これらの製品を世に広げていくのは営業担当者です。しかし、そこで出てきた顧客の声が商品部及び企画開発部門にフィードバックされなければ改善はありません。
営業現場を可視化し、商品部及び企画開発部門へフィールドバックして製品、サービスの強化につなげる上で、SFAは無くてはならないツールだと考えています。
――弊社では営業部門が製品開発の起点となることが、マーケティング&イノベーションの実践だと常々考えています力又御社 は実践をしておられますね。今後ともSFAをお役立て下さい。 本日はありがとうございました。
業種 | 導入年月 | 導入製品 | |
---|---|---|---|
製造業 | 2008年3月 |
キャスコ株式会社 | |||
---|---|---|---|
本 社 | 〒141-0022 東京都品川区東五反田一丁目7番6号 藤和東五反田ビル4階 TEL 03-5793-3411 |
||
設 立 | 昭和39年(1964年)7月 | ||
代 表 者 | 代表取締役社長 阿部二幸 | ||
事 業 内 容 | ゴルフ用品の製造・販売 (ゴルフボール、クラブ、グローブ、バッグ類、ウェア、シューズ、その他ゴルフ関連用品) |
||
資 本 金 | 1億円 | ||
従 業 員 数 | 200名 |